今から14年ほど前、私がお店(小さなBAR)を始めて半年ぐらい経った頃だったと思う。
その当時、蘊蓄マンガで有名な古谷三敏氏の「BARレモンハート」というの単庫本の2巻目が出され、その中にホワイトカナディアンというカナダのウイスキーが出てきた。
ウイスキーといえぱ琥珀色が当たリ前であるが、このウイスキーは透明だったのである。こんなウイスキーがあるのだという驚きと同時にどうしても飲みたくてたまらなくなってしまった。(皆さんも、そうゆう経験があるのではないでしょうか)
早速仕入先の酒屋に間い合わせをしてみたが、今はもう入らないという答えだった。今度は輪入元に電話をしてみたが、「もう製造されていないので小売店を探すとまだあるかもしれません」という冷たい返事である。
「仕入先の酒屋にもないし、諦めるしかないのか」と思ったが、どうもスッキリしない。

それから一週間ほど経って、友人のカメラマンから電話で起こされた。
彼は「サンデマンのライトドライというシェリーが飲みたい」という。 私はまだ半分寝た状態のまま「わかった」というと「今日、欲しいけど」とわがままな事を言うではないか。私もすっかリ目が覚めてしまい、「酒屋を当たってみるよ」といって電話を終えた。
そして、仕入先の酒屋数件に電話をしてみたが、何処も「明日だったら入リます」という同じ答えが返ってきた。(予想どうりの答えであった)
それから今日在庫している酒屋はないのかと考えたあげく、思い付いたのがデパートの洋酒売場だった。 すぐさま電語をしてみたら「有ますよ」と女性の優しい声だった。(きっと素敵な女性に違いないと思えたが、それはさておき)彼に「佐賀玉屋にあったよ、一緒に買いに行こう!」と電話で待合せ場所を決めて出かけていった。
だいたい何処のデパートも地下に洋酒コーナーがある。友人と二人でエスカレーターで下リることにした。(エレペーター・ガールがいたら、それで下りたにちがいないが…)
その当時は、確か新館の地下だったと思う。(今は、本館の地下に有ります。) 洋酒売場にたどリ着き、棚を見て回り、彼の探し物の"シェリー"を手に取って彼に渡した。
彼はそれを持ってレジまで行き、私も後ろから付き添って行き、さっきの電話の素敵な女性?を目で確かめようと思い、彼の背後から眺めていたその時、ある一点に目が止まってしまった。
それは女性の顔ではなく、その後ろの棚にある四角いポトルにである。 それはなんと!。忘れかけようとしていたあの"透明なウイスキー"ではないか!
私は震える声で、まだ彼がお金も払っていないのに、「すみません。あ・あれを下さい」と興奮して言ってしまった。 彼もレジの女性も何事かという顔をしてる。でも、どうでもいい事であったそんなことは。私が探し求めていた「ホワイトカナディアン」の最初の一本を見つけたときの話しである。

これをきっかけに"酒屋巡リ"が始まったのは言うまでもない事実である。
しかし、よくよく考えると彼のわがままな性格に感謝をしなくてはならないであろう。 彼がシェリーを飲みたいと思わなかったら見つからなかったかもしれない。
「透明なウイスキー」が…