お酒に何かを混ぜ合わせて飲むということは、かなり古い時代から行われ、紀元前、エジプトではビールにハチミツを入れたり、また、ローマではワインを海水や泉の水で割り、ときには樹脂を加えて飲んだりしていたといいます。
しかし、その時代には「カクテル」という言葉はまだありませんでした。
でも、現在のカクテルの定義をあてはめれば、その時代のビールやワインの飲み方はカクテルといっていいのではないでしょうか。

カクテルという言葉は、1748年にロンドンで出版された小冊子「ザ・スクァイア・レシピーズ」に “COCKTAIL” という語が登場することから、その頃から言われだしたのは確かなようです。
また、1806年5月13日アメリカの雑誌「バランス」で、「蒸留酒に砂糖、水、ビターを加えて作る刺激的な酒がカクテルである」という語句が掲載されていたといいます。
この記事を由来に最近では5月13日はカクテルの日とされるようになったそうです。

カクテルをつくる上で重要なのはそのレシピをしっかり頭に入れておくことであろう。

その参考となるのが「カクテル・ブック」であるが、その本の多さにはビックリするほどです。どの本を自分の基本のレシピにするかは、バーテンダーの考え方次第だと思います。

でも、一番大事なのは、お客様に合わせたレシピがあるということ。
私も修行時代に一番勉強になったことが

『カクテルには、3つのレシピがある。一つは、カクテルブックのレシピ。もう一つがお店のレシピ。そして、お客様のレシピである。』

ということを教わったことです。

お店のレシピは、カクテルをもっと美味しくつくるにはどうしたらいいのか。ベースのお酒やリキュールは、どのメーカーのがいいのか。などを研究することで出来上がって行きます。

お客様のレシピは、その人のことを知ることで、好きなお酒や味の好みが分かるようになり、その基本のレシピを好みに合わせて微妙に変えてあげることで満足していただけるのではないかと思います。

また、飲む側の立場で言うと、行きつけのBARを見つけることで、今まで飲んでいたカクテルがもっと美味しくなって行きます。

昨年、佐賀で全国バーテンダー技能競技九州決勝大会が開催され、そのポスターの中に副題として「カクテルの隠し味、それはバーテンダーの技術なのです。」を付けさせてもらいました。
さて、隠し味となるものには、他に何があるのでしょう?技術も大きな隠し味の一つであることには違いありません。
お客様を満足させる、喜んでもらえるものとして、カクテル自体の味には好みがあるので、好みに応じて作って差し上げることは、当たり前のことです。
そのカクテルの中に、材料とは別のものが、溶け込んでいることが美味しさを引き出すものなのです。
さて、何を溶け込ませたらいいのでしょう。
私なりに思いつくものは、「愛」「思いやり」「笑顔」「夢」「希望」「家族」「友情」「健康」そして「センス」など…。

カクテルと言う言葉は、18世紀のはじめ頃から使われていたと言います。カクテル自体はもっと前から創られていたのですが、カクテルと言う単語が存在しなかったし、総称として、ミクスト・ドリンク。単体でそのドリンクの名前で愛飲されていたようです。
さて、カクテルの語源は、何かと言うと、「コック・オブ・テール(雄鶏の尻尾)」なのですが、なぜ、雄鶏の尻尾なのでしょう?
その説の一つに、雄鶏の尻尾で混ぜて創っていた。とか、出来上がったドリンクの中に、雄鶏の尻尾が入っていた。とか、または、その当時の「卵酒」を意味する言葉「コクティエ」が訛って「カクテル」と呼ばれるようになった。などなど・・・。
一番有力な説は、スペインの港街での話しで、ミクスト・ドリンクを創る時に使っていた混ぜる棒(マドラー)が雄鶏の尻尾に似た形をしていて、「それは何だ?」と聞かれて、本当はドリンクのことを聞かれたのに、混ぜる棒のことを聞かれたと勘違いして、スペイン語で「コーラ・デ・ガジョ」と答え、この言葉を英訳すると「コック・オブ・テール」となり、やがて「カクテル」と呼ばれるようになった。と言います。
色々諸説がありますが、確定されたものではありません。
まぁ、いずれにしても、色んな味や、色が楽しめるカクテルには、出来上がった背景や物語があるものです。今宵もどこかでまた、新しいカクテルが誕生していることでしょう。