先日の成人式の日(1月9日)、店の準備をしているときに女性から電話がかかって来た。
「息子の成人のお祝いに二人で行きたいけど何時まで開いていますか。」という問い合わせと、「成人の記念にオリジナルカクテルをつくって欲しい。」というお願いだった。
オリジナルやアレンジのカクテルは今までもたくさんつくってきたが、今回は、息子さんの好きな作曲家でガーシュウィン(ジョージ・ガーシュウィン)の名曲6曲をメドレーにした「ガーシュウィン・カクテル」というタイトルの曲があるらしく、その名前にして欲しいということだった。
電話での予約とお願いを受け入れたものの、僕は、ガーシュウィンという名前を聞くのは初めてだったので、早速、インターネットで調べてみることにした。少しでも多くの情報があった方がカクテルはつくりやすいからだ。
まず、“ガーシュウィン・カクテル”で検索してみた。お母さんから話しがあったようにその名前の曲とアルバム(サックス奏者・田中靖人氏)があることが分かった。聞くともっとイメージが湧きカクテルもつくり易いのだが、今日は間に合わない。
次に、“ガーシュウィン”で調べてみた。ロシア系のユダヤ人の息子としてニューヨークに生まれ、オペラやミュージカルなどからポピュラー音楽とクラシック音楽の両面で活躍し、アメリカ音楽を作り上げた作曲家で38歳の若さで亡くなったことが記されていた。また、あの有名な「サマータイム」、ジャニス・ジョプリンが歌うこの曲は、僕も大好きですが、ガーシュウィンがオペラの楽曲として作曲したものだったのです。
それから、よくよく調べていると、鳥肌が立ち、思わず声を出したくなるような事がありました。それは、ガーシュウィンが生まれたのが1898年9月26日。僕の娘が1993年9月26日で月日が同じだったのです。そして、もう一つ驚いた事に、ガーシュウィンには兄がいて名前をアイラ・ガーシュウィンといい、なんと僕の娘の名前も同じ“あいら”なのです。これに気付いたときは、ホント鳥肌が立ち、声を出してしまいました。
オリジナルカクテルをつくる上での情報を得ようと調べた事で、何か不思議な縁を感じ、その縁がアイデアを導いてくれたような気がしました。
約束の時間になり、お母さんと息子さんのお二人が入って来られました。空けて置いた二つの席に案内し、息子さんに「ご成人おめでとう!」と挨拶をした後、ガーシュウィンについて色々調べ、ものすごい縁を感じたことをお話ししました。
お二人とも、その話しを聞いてホントに驚かれた様子と縁があることとここに親子でこれた事を喜ばれていました。
そして、オリジナルカクテル「ガーシュウィン」をお二人にお出ししました。ワイングラスに入れた、薄い緑色のロングカクテルです。材料は、ガーシュウィンがロシア系だったので迷わずウオッカに決め、アメリカを代表するリキュール、サザンカンフォートを使いオレンジジュースとブルーキュラソーをほんの少し加えてシェイクし、ワイングラスに注いで氷を入れ、ジンジャーエールで満たせば出来上がりです。
お二人とも、味も色もとても気に入って下さいました。お母さんはそのカクテルの色が好きな色だと喜ばれてました。息子さんも、初めてこのBARに連れて来てもらったことと、自分の好きなガーシュウィンの名が付いた、カクテルを記念に飲めたことに感激されていました。
母親の成人する我が子に対する粋な計らいが、縁を招き、親の愛情と子供の感謝の気持ちを感じる一日となりました。
「ご成人おめでとうございます。そして、ありがとうございました。」