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オールドパル“ぷらざ5月号”

オールドパル写真.JPG
時計の針は10時を回り、静かな一日になりそうだと思ってたところに、勢いよく扉が開いた。
『いらっしゃいませ!』と扉の方に声を投げかけた。
「こんばんは!」といつもの常連さんが機嫌よく入ってきた。その後に続くように、もう一人、男性が入ってきた。
『いらっしゃいませ!』とまた声をかけた。
常連さんは、迷うことなくいつもの席へ座り、その隣に男性も落ち着いた。
『今日は、どうしたの?上機嫌じゃない!』
「マスター!紹介するよ。僕の小学校からの同級生でね。ここに来る途中で偶然会ったんだぁ。」
『そうですか。初めまして、よろしくお願いします。』
「初めまして。いいお店ですね。」
『ありがとうございます。』
「僕たち、腐れ縁で、高校までずっと一緒だったんだよ。」
『いいじゃないですか。そういう仲間がいて、羨ましいことですよ。ところで、何にしましょうか?』
「決まってるでしょ!ハイボールを2つ。」
『二杯ね。かしこまりました。』
と答え、いつものウイスキーのソーダ割りをつくり、常連さんとその男性にお出しした。
「いただきます!」といつになく元気な常連さんだ。一口飲んでまた口が動き出した。
「美味いだろう!僕がいつも飲んでる“ハイボール”ってやつだよ。」
「知ってるよ。俺もよく飲んでるし、BARは好きでね。」
「そ、そうなんだ・・・。し、しかし、15年ぶりだよなぁ。」
「もう、15年も経つのかぁ。」
「マスター!ちょっと聞いてくれる?」
『はい。なんでしょう?』
「高校時代に、コイツと僕は同じ女性を好きになってね。どっちが先に気持ちを伝えるかって、競い合ってさぁ・・・。」
『へぇ、で、どうだったの?』
「僕が先だったけど。見事にフラれてしまったね。でも、コイツはね、結局何も言えなかったんだよ。」
「おいまてよ。それは違うぞ。俺がフッたんだよ。今だから言えるけど・・・。」
「えぇ。何だよ。彼女は、お前を好きだったのか?」
『まぁまぁ。ところで、お二人さん、ハイボールが空になってるけど?』
「あっ。僕は、お代わり!」
「俺は、何かカクテルをもらおうかな?」と男性から声がした。
『かしこまりました。』と返したあと、常連さんにハイボールをつくり、空のグラスと取り替えた。そして、バック棚を見渡し、ウイスキーとカンパリを取り冷蔵庫からドライベルモット出して、カウンターの上に並べた。
「ねぇ。何つくるの!」と常連さんが問いかけてきた。
『ちょっと、静かにしてて・・・。』と答え、ミキシンググラスを取り、氷を入れた。そこに並べた材料を入れ、バースプーンで素早く混ぜ合わせた。
ストレーナーを被せ、冷しておいたカクテルグラスに静かに注ぎ、その男性の前のコースターの上に運んだ。
『はい。どうぞ!』
「ありがとうございます。」と声が聞こえた。
「マスター・・・。喋っていい?」と常連さんからも声がした。
『どうぞどうぞ。』
「で、そのカクテルは何なの?」
『“オールド・パル”というカクテルです。』
「へぇ〜。」と常連さんが返した後、男性からも声が聞こえた。
「オールド・パルですか。」
『“古い仲間”という意味だけど、意訳したら“親友”と同じだね。』
「“親友”か・・・。お前とも長い付き合いだもんな。こらからもよろしく頼むよ。」
とその男性の後に、すぐに常連さんが話し始めた。
「今更、何だよ。かしこまってさ。当たり前だろう。でも、彼女がお前を好きだったとは。ショックだよ。」
それからしばらくの間、グラスの中の氷の音だけが聞こえていた。
そして、常連さんのグラスが空いたのと同時に男性の方が先に口を動かした。
「このカクテルは、ほろ苦いところがいいんだよ。まさしく友情の味がするね。」
「何を、カッコ付けてんだよ…。」という常連さんに続いて
「俺は先に帰るから。」とその男性は席を立った。
「そぅ、そうか。僕は、閉店までマスターに付き合うよ。」
『ありがとうございます。また寄って下さい。』
とその男性を見送り、カウンターの中に戻った。そして、一人になった常連さんの前に行き、声をかけた。
『いい方じゃないですか。彼女よりも友情が大事だったんですよ。』
「アイツ、転勤でこっちに帰ってきたけど、変わってないなぁ。カッコいい役ばっかりしてさぁ。」
『あなたも、全然変わってませんね。口説き好きで、フラれっぱなしで、過去を引きずるところなんか。』
「もう!ただ、ショックなだけです。」
『癒してくれるハイボールをお代わりしようか。』
「は、はい・・・。」
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