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モスコーミュール“ぷらざ3月号”

モスコーミュール写真.JPG
今日は、珍しくいつもの常連さんが来る前に、お客様がお見えになった。開業当初から通って下さっている方で、奥様もご一緒である。
ご主人にはサッパリめのショートカクテルを、奥様には、ちょっと甘めのロングカクテルをお出しし、それぞれ二杯目をお飲みになっている。
「マスター。この場所に移って何年経つかな?」
『10年目になりました。前の店から合わせると21年目ですよ。』
「そうか・・・。もう、そんなになるのか・・・。ということは20年はこの店に通っていることになるなぁ。」
『そうですね。ほんと長いお付き合いありがとうございます。』
「いやいや最近は、ご無沙汰しててすまなかったね。」
『とんでもない。ご夫婦揃ってお顔を出して下さるだけで嬉しいし、ありがたいですよ。』
「しかし、マスターも変わらないね。」
『そんなことはないですよ。お店と共に20年は歳を取りましたから…。』
「でも、子供たちが成長したのを見ると、歳を取ったんだと感じるね。こうやって、カミさんともまた来れるようになったし・・・。」
『いいじゃないですか。私も早くそうなりたいです。』
と会話が弾んでる時に、扉が開き、いつもの常連さんが入ってきた。いつもだったら、常連さんがその日の最初のお客様なのだが・・・。

『いらっしゃい!』
「ぼ、僕が一番目じゃなかったんですね。」
『はい。残念でしたね・・・。』
「ま、まぁいいか・・・。」と呟きながら、いつもの角の席へ吸い込まれてゆくように腰を下ろした。
『いつもので?』
「もう、分かってるくせに・・・。言わせたいんでしょう。ハイボールって。」
『一応、確認しないとね。』
とやり取りの後、ハイボールをつくって角の席へ運んだ。そして、ご夫婦の前へ戻った。

「マスター。最後の一杯、“アレ”をお願いするよ。家内はもういいようだ。」
『かしこまりました。』
と答えて、銅製のマグカップを出してカウンターの上に置いた。それから冷蔵庫からウオッカ(自家製の生姜を漬け込んだもの)とジンジャーエールを取り出し、同じようにカウンターの上に並べた。
まず、8分の1にカットしたライムを用意し、それを指で潰しながらマグカップの中に入れる。氷を加えてウオッカ入れ、ジンジャーエールを満たし、軽くステアすると出来上がりだ。
『はい。どうぞ!“モスコーミュール”です。』と言って、そのご主人の前のコースターに静かに運んだ。
「おぉ。出来たか。ここに最初に来た時から習慣になってしまってね。これを飲まないと帰れないからなぁ・・・。」
『そうですね。』
「うん。美味い!ショウガが効いてて、ちょっと辛めなのがいい。やっぱり最後はこれだな。それと、マグカップで飲めるのが嬉しいね。」
『モスコーミュールは、マグカップでお出しするのが定番ですからね。』
「さて・・・。帰るとするか・・・。また、お邪魔するよ。」
『ありがとうございます。』
「最近はね、家内と一緒に飲めるのが楽しみででね・・・。」
『羨ましいかぎりです。また、ご一緒にご来店下さい。』
と扉の外までお見送りをした。
カウンターの中に戻り、空のグラスとマグカップを下げ、洗って拭きあげた。
そして、一人寂しそうにしている、いつもの常連さんの前に行った。

『すみませんね。ハイボール、空でしたね。』と話しかけ、氷だけになったグラスを下げ、新しいソーダ割りをつくって角の席まで戻った。
「早い時間から忙しかったんだ・・・。」
『珍しくね。』
「歳を取っても、夫婦で一緒に飲めるっていいよね・・・。」
『でしょう。』
「ところでさぁ。マグカップでつくるカクテルもあるんだね?」
『いいところに、気が付きましたね。あのカクテルには、ちょっとした逸話があってね・・・。聞きたい!』
「言いたいんでしょ!もったいぶらないで教えてよ!」
『昔ね。三人の営業マンが、それぞれジンジャーエール、ウオッカ、そしてマグカップが、思うように売れなくて悩んでいてね。三人がコラボして考え出したのが、そのカクテルなんですよ。簡単に言うとね・・・。』
「へぇ〜。そうなんだぁ。三人寄れば文殊の知恵ですか・・・。」
『おぉ、すごいね。そういう言葉が聞けるとは・・・。』
「一応、大学出てますから・・・。」
『し、失礼しました。』
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